内村鑑三が主宰する聖書研究会には常に多くの人が集まり、中には後に日本の各界に大きな貢献を為した優れた人物たちもいました。黒崎幸吉、畔上賢造、藤井武、石原兵永、塚本虎二…。中でも塚本は、語学の才能もあり、聖書原典を詳しく学び、病弱な内村に代わって講義をすることもありました。でも、いつしかそんな彼も、個性の強い内村と感情的にぶつかり、ついに二人は仲たがいに…。その後、内村の心臓病が重症化し、死期も近いと聞いた塚本は師の見舞いに…と思いますが、結局それもかないませんでした。ある日、内村の弟子の一人が塚本にこう告げます。「先生は病床の中で何度も仰っていました。『塚本は来ないか。塚本に会いたい。…』」師の思いを知った塚本は声をあげて、男泣きに泣いたとのこと。せめて世を去る時に心残りがないように心がけたいものです。